始まり

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「おじいちゃんのお見舞いに。」 なんて、気持ち悪いくらいの笑顔でやってきて。 このジイさんも、相当な資産家らしく、元華族とからしい。 通称『魔王』 だって、産まれは明治一桁。 ルパンに出てきた『マ○ー』を彷彿とさせる。 だから魔王。 あたしが勝手に付けたんだけど。 その魔王め、ニヤッと笑いながら 「華彌(はなみ)さんにそっくりになってきた。」 なんて、いやらしい目で見て、手まで握ってきた。 華彌さんて、ひいおばあちゃん? だか? ひいひいおばあちゃんだか? だったはず。 確かに、名前の一文字は一緒だけどさ。 20代前半で亡くなったらしく、写真でしか見た事ない。 親戚なんだから、似ててもおかしくないでしょ?! 一番許せないのは、あたしの手まで握りやがって!! エロ魔王め!!!!!!! しかも、会食の席が魔王の隣なんて信じられない。 年に1度の親族の顔合わせ会で、大事な席なのは分かってる。 凄く大事な席だ。 だって、叔父さんや叔母さん達が、勉強頑張れって、参考書代と言って、おこづかい大量にくれるんだもん。 叔父さん叔母さん、合わせて13人。 いとこ連中は、みんな大学生や社会人ばっかりだし。 ここぞとばかりに、おこづかい貰うんだから。 去年は、総額¥240.000。 そんな席に、行かないはずはないでしょ。 なのに、今年に限ってあの魔王が隣の席なんて。 最悪もいい所。 こんな苦痛に耐え切れず、思わず撮影終わって、すぐに逃げてしまった。
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