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鬱々とした気分で商店街をぬけようとした時、急に目の前にホッカホカのコロッケが現れた。
「!?」
反射的に腹の虫がグーっと間抜けな音を出す。
「食う?」
コロッケに釘付けの視線を横にずらす。
心臓が飛び出るかと思った。
目の前には柴田が立っていた。
柴田は俺に差し出したコロッケとは別のコロッケを銜えながら、ホレホレと右手を揺らした。
コロッケから立ち昇る湯気が良い香りを運んでくる。
思わず両手でコロッケを受け取ると、また腹の虫がグー。
「あはは。じゃな」
ヒラヒラ手を振り柴田が去っていく。
その後ろ姿が人ごみに紛れて見えなくなるまで、俺は動けなかった。
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