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「昨日はありがと」 俺がそう言うと柴田は俺の右足に視線を落とした。 「足、大丈夫か?」 「うん。ちょっと捻っただけだって」 「そうか。無理するなよ」 「おう」 俺がへへっと笑って見せるといつもは冷たい印象を与えるメガネの奥の黒い瞳が柔らかく緩んだ。 心臓が形容し難い音を立てて跳ねたような気がした。 柴田と、こんな風に話せるなんて思ってもみなかった。 今なら聞ける。 「あのさ、柴田。昨日、商店街でコロッケ買わなかった?」 「コロッケ?」 聞き返してきた柴田の声で答えが分かってしまった。 「いや。商店街には行ってない」 ・・・やっぱり。 「コロッケがどうかしたのか?」 「あ、いや、なんでもない!」 ガッカリした気持ちを隠して首を振った時、ガラッと教室の戸が開いた。 「じゃな、柴田!」 橘が教室に入ってくるのを見て俺は慌てて柴田から離れた。    
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