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トイレに向かったはずの俺は、ため息付きつつ職員室に行く羽目になっていた。
トイレの前で担任に出会って、何か知らないけど「用事があるから職員室まで来い」って言われた。
「何で俺が!?」
反論したら俺がクラス委員だからなんだと。
そう言えば入学式の翌日。
最初の授業で決まったっけ。
周りに押し付けられたクラス委員。
今までクラス委員らしい事なんて最初の委員決めの時の司会ぐらいしかしてなかったから忘れてた。
こんな事なら長谷川も道連れにしてやれば良かった。
恨みがましく前を歩く担任の背中を睨む。
「せんせー・・・」
「なんだ?」
俺の呼びかけに担任は背中越しに返事する。
「俺さ、職員室入りたく無いんだけど」
「どうして?」
「・・・職員室ってコーヒー臭い」
「武藤、コーヒー苦手か?」
「さぶいぼ出る」
子供だなってからかって笑われるかと思ったけど先生はそんな事言わず。
「じゃ、ここで待ってろ」
職員室に着くと自分だけ中に入っていった。
職員室の戸の真向かいの窓に寄りかかって行きかう生徒を見るともなしに見ていると、先生はすぐに出てきた。
プリント運びでもさせられるのかと思ってた俺は、先生と一緒に出てきた人物を見て開いた口が塞がらなくなる。
「今日から我が1年2組に仲間入りする転入生だ。今から教室に行くから武藤も一緒に行ってくれ。教師と一対一よりクラスメートも一緒の方がいいかと思ってな」
先生はそう言って笑ったけど、俺の耳にはほとんど先生の声は入ってこなかった。
「こいつは武藤。ウチのクラス委員だ。困ったことや分からない事があればこいつに聞けば良い。もっともお前の場合、一番聞きやすい奴がクラスにいるか」
「いえ。あいつはむしろ俺の事、無視したりしますから。ヨロシク、武藤君」
笑って軽く会釈した転入生。
「あ、ヨロシク」
つられて頭を下げたけど、目は転入生に釘図けのまま。
俺はまた、白昼夢を見ているのかもしれない。
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