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生徒が行きかう廊下を先生と転入生の後をついて歩いていく。 朝の活気あふれる空気と雑踏。 でも俺の耳には音なんて届かない。 目の前を歩く背中から目が離せず、危うく何もないところで転びそうになった。 「うぁっ」 思わず宙をかいて触れたものにしがみつく手。 それが転入生の制服だと気付いたとたん心臓がバックンって鳴った。 「ぁ、ぅ、ごめん」 焦って離しかけた手を振り返った転入生につかまれた。 「いいよ。足、痛いんだろ」 「そういえば、武藤。昨日、捻挫したんだって?」 タイミング良く先生が振り返る。 ホントは捻挫ってほど酷くないけど。 曖昧に頷いて肯定した。 「あんま無理するなよ」 軽く言って先生はまた教室に向かう為に歩き出す。 「ほら」 先生に続いて踵を返した転入生も俺の手を引いて歩き出した。 幼稚園児じゃあるまいし、お手手繋いで仲良しこよしは恥ずかしすぎる。 だけど振り払う事も出来ず。教室の前まで来てしまった。
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