その壱

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「…赤い眼鏡をしてみてくれませんか?」 突然そう言ってきたのは、私の住んでるアパートの下の階に住む高校生の男の子だった。 仕事終わり。 買い物の帰り。 夕飯は何にしようかと悩みながら、といっても、ほんとに悩んでるわけでもなく、今日もビールを飲んで肴をつつく程度だろうと、帰宅後のお決まりコースを思い描いていた矢先の出来事。 ウチのドアの前にしゃがみこんで顔を伏せているから、何事かと思って声をかけたら、返ってきたのがその言葉だった。  「へっ……?」 私は目を見開いて、間の抜けた言葉を発してしまった。 今年、齢25。 このトシになるまでに色んな経験をしてきた、と思う。 恋愛は数える程度だけれど、夜のお仕事も社会勉強済み。  年上とも、年下とも、お付き合いした事があり、結果、自分は同い年が一番合うのかな?と思いつつ、今現在は彼氏なし。 最近は保険付きのバイトなんかしながら、そろそろ結婚とかしたいなぁ、なんて夢をみてはいるけど、現実の厳しさを肌で感じていたり……
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