その壱

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ハイ、何故にこんな恋愛履歴が、頭の中を駆け巡ったかといいますと。 だって、やっぱこれって、アレ、…? …“お誘い”?なんて思ったわけで。  赤い眼鏡をかけろ、ってことはだよ? 私に、“萌”的なものを要求してるわけ、でしょ?  私がそれをすることによって、この少年は欲求を満たされるってワケでしょ?  ていうか、それ以外考え付かない私の頭って、貧困?自意識過剰? …欲求、不満? 「…中野、さんちの息子さんだよね…?」 確か、姓はそうだったと思う。 冷静を装いつつ、私は彼に問いかけた。 「突然でびっくりしちゃった、…ウチの前で座り込んでるから、具合でも、悪いのかと思って…」 「……」 「もう、8時過ぎてるけど、…ご飯、食べたの?ここで何してるのたの?」 あまりまとまりのない質問を投げ掛けつつ、私は部屋の鍵を探すフリをした。  本当は、バッグの内ポケット、そこに鍵があるのはわかってる。 だっていつも習慣でそうしてるのだから。  ただ、こんな子供に、ちょっと性の匂いを感じてしまった私は、動揺してそんな行動をとった、のだ。  少年は、そんな私の様子から、わざと目をそらしながら呟いた。  「ウチ、親父しかいないし…、大体、仕事で遅いんで…」 「そうなんだ、お父さん、何時ごろ帰ってくるの?」 「…夜中、いつも、2時過ぎたり」 「じゃあ、ごはんとか、どうしてるの…」 「夜は、食べないこと、多くて、…朝はすこし。昼は、購買で何か買ったり」 「そんな、…それじゃ」 私は、次に彼にかける言葉を、探しながら顔を上げる。  まだ幼さの残るその少年は、ひどく弱々しくみえた。  私は、若干躊躇しつつも、彼を部屋にいれる心構えを、頭の中で巡らせていた。
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