その弐

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部屋に入ると、彼は落ち着き無く、低めのテーブルの横に腰をおろした。  どちらかといえば殺風景な私の部屋。  女らしいものはほとんど無く、モノトーンでまとめられた、居心地の悪い空間。 いや、男、にはそうでもないのかもしれない。  むしろ、こんな部屋のほうが、…- 私は、とりあえずサラダをつくりながら、彼にコーヒーをいれて差し出す。  「砂糖、いる?」 「いえ、…ブラックでいいです」 子どものくせに、と 私は少し笑った。  結局、出来上がったものはというと、  “オムライス”。  子供といえば、そんなイメージだったし、あるもので作れる料理といったら、コレぐらいだった。  盛りつけを少し豪華にしてやると、彼は予想以上に驚いて、店で出てくる料理だ、などと、大げさに言った。 ただ、食べるだけでは間が持たないと思い、私はTVをつけながら、さりげなく聞いた。  「中野君は、…いくつなのかな」 「17です」 「じゅ…」 わかっていたはずなのに。実際の年齢を聞いて愕然とする。  (こんな子供を部屋に入れて…私ってば、何やってるんだろ、) ショックを隠しきれず押し黙った私に、今度は彼が質問してきた。  「お姉さんは、いくつですか」 「…女のひとにトシをきくもをじゃないって、」 私は苦笑してそう答える。  さっき一瞬でも、この子に“オス”を感じてしまった自分が恥ずかしい。   (そうだよ、こんな子供が、何をすると思ったんだろ私ってば) 一気に緊張が解けた私は、ふっと笑いをもらした。  「私はね、25だよ。君とは八歳も離れてるんだね」 笑いながら言うと、彼はじっと私の顔をみつめた。  「…おれ、まだ、全然ガキですから」 一言そう言って、サラダには見向きもせず、メインばかりを口に運んだ。   「うまいです、すごく」 言いながら、1人でほぼ食べつくしてしまった。  私は、彼の食べっぷりを眺めながら、サラダを少しつまむ。  先刻、入り口付近で考えていた事など、とうに頭の中から消えていた。  最初に何を言われたのかも、その時は忘れていた。
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