木曜日―A

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授業も終わり放課後、出来るだけ早く俺は隣のクラスへと向かうため帰り支度を始めた。 その姿を見て一人の男子生徒が俺を茶化す。 「相変わらず熱々だねぇ」 「うるさいな、熱々で悪かったな」 こいつは川口雅紀。 見た目はただのスポーツマンなのだが意外なことに美術部に所属している。 「絵の具はオレの心を描く道具なんだ」とか良くわからないことをたまに言うが基本的には良いやつだ。 「じゃあな」 「おう」 っと軽い挨拶を済まし俺は教室を出た。 「お待たせ」 「おっそーい。どれだけ私を待たせてるの?」 「ごめん、ちょっと帰りのホームルームが長引いてさ」 「冗談、冗談。私もちょっと前に終わったばかりだよ。あははっ」 小悪魔的な笑みを浮かべたのは俺の彼女の多奈川由香だ。 いたずらっぽさとあどけなさを持った可愛い少女って感じだ。 「一緒に帰ろーか」 ぐいぐいと腕を引っ張られ教室から出される。 俺はいつもこんな風に彼女に振り回されつつ帰路につく。 こんな時間がいつまでも続けば良いのになと思った。
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