赤色少女と猫と俺

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「…………ありがとう」 ふと赤石が呟いた。 俺の聞き間違いじゃなければ赤石は今俺に礼を言った。 「なんで…?」 お礼を言われるような事はしてないはずなのに。 俺の言葉に赤石は顔を上げる。 少し潤んだ目で俺を見たまま口を開く。 「初めて…」 「えっ?」 「初めて言われたの…前に進んでるって」 そう言うと目に溜まった涙を指で拭う。 「ありがとう」 そう言ってとびっきりの笑顔を俺に向けた。 「いきなりごめんね…」 「いや、大丈夫だよ」 あれから少し時間が経って赤石は落ち着いたのかもう目に涙は無い。 「にゃお」 いきなりタマが鳴き声をあげれば丸まっていた俺の膝から降りて公園の入口に走り出す。
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