迷子

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「あー、ついてない。」  梅雨のある日のこと、俺は駅の電光掲示板を見て思わずそう言ってしまった。 そこに書いてある情報によれば、人身事故によって普段使っている路線が暫く動かなくなるらしい。 幸い俺の地元駅は他の路線からも行けるのでこのまま待ちぼうけ、ということにはならないが普段より時間が掛かるのは確かだ。 その上、普段行かない駅だから多少迷うかもしれない。 とにかく面倒なことに変わりはなかった。 「はぁ……」  もう一度ため息を吐いてから歩きだす。 思えば今日は本当についていない。 雨のせいで自転車は使えないし、行きの電車では危うく痴漢犯にされそうになったし、携帯には何処からか個人情報が漏れたらしく迷惑メールがわんさかやってくる。 さらに、授業中にはうとうとしていたところを当てられるし、いざ昼休みに寝ようと思えば委員会の仕事があるから寝れないしで、全くもってついていないとしか言えない。 (確か今日の運勢は最高だったはずなんだけどなぁ……)  今朝、たまたま目に入った星座占いを思い出す。 その記憶によれば、今日の乙女座は総合一位だったはずだ。 どうやら、運勢っていうのは当てにならないらしい。見慣れた各駅停車のホームから少し離れた快速線のホームへと移動する。 先ほどの情報の影響か、普段遠目から見るより待っている人は多いようだった。 次の停車時間は数分らしく、さほど待つ必要はないらしい。 じめじめした空気と、自分の不運さにガタガタに落ちてしまったテンションを無理矢理にでも上げるべく、俺はオーディオプレイヤーに繋げたイヤホンを耳にはめ、電車が来るのを待った。
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