六車藍子④

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 担当者の言う通り、飲酒に喫煙、暴力、乱れた性など、若き日の非行を書き綴った書籍が乱発された時期があった。  悪事を自ら告白し、一つのスパイスにする。あの日の経験があったからこそ今の更正した自分がいる、といった感動ストーリーを作り出す。  すると不思議なくらい黒かった過去が輝いてしまうというレトリックが成立する。  この業界はどんなことでも話題にできる。注目を集める為なら過去を告白したり、恋人を暴露したり、プライベートを公開する。  だから未成年時に起こした非行も、やり方次第では充分に商売として成立させることが可能なのだ。  タバコ一本とってみても「昔はワルやってました」で済まされる者もいれば、その一本で天地がひっくり返るほど急落したアイドルもいる。
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