六車藍子④

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「ちょっとね。頼み事があってさ」 リリコは「ふーん」と頷き、訝しげな表情で私に視線を送る。「あのさ」と指を差してきた。 「その頼み事と、その恰好は何か関係があるの?」 「あぁ、これ。念には念を入れてね」  どこで誰が見ているかわからない。  慎重派の私は渋谷の事務所から麻布十番のイタリアンレストランまで、素顔がバレないように女スパイスの恰好をしてきた。  カーキ色のトレンチコートを着て、顔には大きなレイバンのサングラスを着用する。  頭には黒いスカーフをマチコ巻きにすれば、変装は完璧だ。
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