六車藍子④

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 確かに変装が完璧ならばフレンドリーに挨拶などしてこない。  素直に「ゴメン」と謝って、トレンチコートを脱ぎ、サングラスを外した。その状態でスカーフを頭に巻いていても滑稽なので、潔く解いた。 「藍子の場合、変装するなら口元のホクロを隠さないと意味ないわ」  あの頃から何も変わっていない。大学時代と同様に、リリコはズバズバとものを言う。  こうしたハッキリとした態度に嫌悪感を抱く人もいるが、私はむしろ好意的に受け取っている。  マネージャーの仕事をしているときなどは、頭の片隅にリリコをイメージしながら働いているくらいだ。きっと自分にない部分に憧れているのだろう。
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