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月と少年
月って神秘だと思う。
太陽が消えた闇夜の中を唯一輝く。
黄金色に光り、それでいてどこか薄幸な雰囲気を醸しだす。
神秘でなくてなんと言えばいいのか。
そう、僕は月が大好きなのである。
眺めているだけで幸せな気持ちになれる。どんな形の月も大好きなのだ。
物心ついたときからそれに魅了され育ってきた。日に日に愛情を増しながら育ってきた。
今では気付けば月をただただ眺めている。
見えない日はすぐに寝ている。
それが僕、ルウだ。
目を覚ますともう月はなくなっていた。
代わりにおびただしい光が明朝であることを僕に語りかける。
いつの間にか寝てしまった。
昨日の夜も、僕は月を眺めていた。
いつも通り。自分の家の窓から。
外にでる必要はないんだ。僕の家の窓からは何者にも遮られることなく月を眺めることができる。
だからいつも僕は、自分の家から月を眺めている。
飽きることのない。
闇夜に輝く黄金を。
「おしいことをしたな。昨日の月はそれはそれは綺麗だった。今までの中で一番綺麗だったんじゃないかな?」
だめだ。そう思うとますます惜しくなってきた。
あれが満月なのかな?
僕は本棚から一冊の小説を取り出した。
『月の国』
いわゆるファンタジーな小説。月には国があってそこはみな歌ったり踊ったりして暮らしている。主人公がその月の国に来てしまって………っという感じ。内容はあまりおもしろくないけど挿し絵の絵が綺麗で買った。
僕はしおりの挟んであるページを開いた。
一ページでっかく描かれている丸い月。
いつ見ても心を奪われる。ほかの挿し絵も綺麗だけどこれだけは飛び出て美しく感じる。
文字通り輝いて見えるその絵の月を僕は今までに一度も見たことがない。
まん丸とした凛々しいその月を僕は今だかつて目にしたことがないんだ。
この小説を読んで初めてこの月の存在を知った。
「違う。あれは満月じゃない」
今まで僕が見てきた月は、確かに綺麗であったけど欠けて見えていた。
この小説に描かれているまん丸るとした月こそが、月の本当の姿なら。
一度でもいい。
その月を満足がいくまで。
眺めていたい。
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