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小説を本棚に戻し簡単な朝食を作る。村のパン職人・ベレッダさんが作ったパンとスクランブルエッグ。
いつも通りの朝食。
と、スクランブルエッグを二口食べた辺りから外が賑わいだしていることに気がついた。
「何だろう?」
軽く窓の外をみる。
村の人達数人が一つの家に集まっている。
集会か何かならまだ納得がいくのだが、その家は僕が知る限り空き家のはず。
ここ数年あの家に人が集まることなんてなかったし、そもそも集会はいつも村の中央広場で行っているのだ。
疑問を抱えながら一先ず朝食をたいらげた。
そして問題の家に行ってみる。
「どうしたんです?」
「やぁ、ルウ君。おはよう。起こしてしまったかね?」
村唯一のパン職人ベレッダさんが僕に気付いてくれた。
「そうだ、ルウ君。君もご近所さんになるのだからごあいさつしときなさい。」
ベレッダさんは僕を集団の中央へ招いた。
中心にいたのは見知らぬ家族。少女一人とその両親らしい二人の計三人。
「初めまして。ルウ君というんだね。ベレッダさん達から話は聞いてるよ。あの赤い屋根の家に住んでいるだね。」
中年の男性がしゃべりかけてきた。
顎髭を蓄えた目の優しいおじさん。
「私はデディ・ライムス。隣は妻のサマンサ。この子が娘のナナウィだ。さっ、二人とも。ご挨拶を。」
「初めまして、ルウ君。」
「初めまして。」
なる程、理解した。
要するにこの人達は今朝この村に引っ越してきたんだ。
この村の人達、人がいいから新しく来た隣人に挨拶なりなんなりで集まってたんだ。
「初めまして、ルウです。」
挨拶をすると娘のナナウィちゃんと目があった。見た目十五歳位の女の子。
だけどどこか大人びている。
というか。
なんか、
綺麗だ。
澄んだ瞳をしてる。
綺麗な黄金色の髪。
そう、まるで。
闇夜に輝く
月のような。
「ベレッダさん。僕もう行きます。」
初めてだ。
頭の中が真っ白だ。
集団から抜け出し家に戻った。
そろそろ街に行かないといけない。
僕が住んでいるのは小さな村だ。
村の人口もあまり多くなく、若い子も少ない。ほとんどの若者は皆、街に出てしまっている。
街の方が働き口もあるし、物量も揃っているから。
そんな僕も街に仕事場がある。
「さて、急がないと。」
僕は村をあとにした。
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