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#01 『火鼠の皮衣』
人類の一部は月へ移住した。
月ロケットは進化を続け、やがて人々は宇宙旅行へ。夢に見た光景は現実の物となった。月は開拓され、月面には都が形成された。地球の人類が済める環境も調い、本格的に月へ移住した人も少なくはない。
しかしながら、輝かしい科学の発達は、輝かしい結果しか残さないわけではない。どんなに科学が発達しようと、『負の精神』は治すことができなかった。
自殺や殺人などは止むことはない。希望だった物が希望でなくなり、年々それは増えつづけることになった。
そんな日々が続く。輝かしい未来の裏には暗い未来もついて回る。表裏一体で、時は呆気なく過ぎ去っていった。
疫病。地球上で言うスペイン風邪を上回る程のその病は、月の都をあっという間に飲み込んだ。治す術は見付からぬまま規模はさらに拡大、地球への帰路は断絶。勿論、月は壊滅。
が、一部の人間が生き残る。蠢く病人の山の中に、ただ立ち上がった人間がいた。これが『月人』と呼ばれる新しい人類への進化の前触れであった。
―――――やがて、人々は地球を忘れ、月を忘れた。ヤドカリが新しい住家を見付けたら前の殻を忘れるように、月に済む人間は、地球から隔絶されたまま、月人として新しい生物の歴史を刻んでいった。
とは言えど、元は地球にいた人間、勿論文明も持っている。ともあれば、一番上に立ち月を統治する人物も出てくる。
川 ゚ -゚)「反逆者はどうなった?」
高層ビルから下々の街を見下ろしながら彼女は配下であろうに尋ねる。
(,,゚Д゚)「捕らえました。報告通り、15人全てです」
月の長に就くは、一人の少女。月を統治するその位を『かぐや』と言った。人々は位の名で呼ぶが為、『かぐや』の名前を知る者は殆どいない。
絶対的な権力を持つ地位に何故一人の少女が就くことが出来るのだろうか。それは、月人は皆、ある能力を持つからである。そして、彼女の持つ能力が人より秀でていたから。
配下から渡された報告書を眺める『かぐや』。全て異常無し……と、確認を終えようとした所だ。
川 ゚ -゚)「これで全てか?」
(,,゚Д゚)「はい」
川 ゚ -゚)「奴の名前がリストに載っていないのだが……どうなったのかね」
(,,゚Д゚)「奴、とは?」
『かぐや』は呟く。遠く、地球を見据え。
川 ゚ -゚)「偽物の『月』」
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