#01 『火鼠の皮衣』

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 近寄ってみれば成る程、確かに金属の臭いしかしない。竹特有の香りは一切しない。遠くから見ればただの光り輝く竹だったが、今ではただの金属の塊だ。  ……という事は、伝説の竹はなかったということになるのではないか? というか、最初からそんな都合の良い話があるわけがなかったのだ。何だよ、黄金の竹(笑)って。 (;^ω^)「…………」  僕が今まで生きて来たほぼ全てを否定された瞬間だった。これからどうやって人生を過ごして行こうか。もう結構な歳だしなぁ。 ξ゚⊿゚)ξ「もしもし」 ( ^ω^)「あ、はい」  とりあえず、この黄金の鉄の塊とやらを運び出してから考えることにしよう。そう考えた。  とりあえず鍛えた腕はある、竹細工で生きてはゆけるだろう。問題は生き甲斐だが、やはりなくてはつまらない。  何もしない人生には何も意味がない、そう僕は考えたが、頭の中を色んな思考が錯綜する。  もしかしたら、「神は竹細工を作らせる為に今まで生かしていたのかもしれない」とか、「これから転機が訪れ新しい何かを見付け今以上に生活水準が向上するかもしれない」とか……  何にせよ、困っている人がいたら助けるのが道理。金属の竹を開けた場所まで運ぶことにした。  抱えてみると、案外軽い。金属で、しかも太いし長い。こんなものが持てるハズがないと考えていたが、そうでもなかった。  彼女曰く、「特殊合金を使ってるから」らしい。本来の竹より若干軽いのにこの大きさ、俄かに信じられはしない。
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