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('A`)「救いがあればいいんだがねぇ」
男は落胆していた。周りを見回せど、伸びきった雑草を踏み締めたような跡は去って行った二つ以外にはなかった。近所のやんちゃな餓鬼共が遊びに来た形跡もないし、即ち、ここに来る必要がある人間がいないのだ。望み薄し、助けはない。
……と思ったが、彼は助かる方法が一つだけあるのを思い出す。叫んでもどうせ無駄だと思われたか、口が塞がれていなかったのが幸い。彼はゆっくり、前に勢い良く飛ばぬよう唾液を垂らす。口の中に一粒の小さな種を仕込んでいて、そいつを唾液と共に地面に落とした。
しばらくして、異常な速度でその種は芽を出し、葉を作り、ついには花を咲かす。小さな小さな花だが、見た目あまりよろしくない。あまりのグロテスクさに気分が悪くなる。口の中にの種を仕込んでいたと考えると、さらに彼は気持ち悪くなった。
¥・∀・¥「こんな所で何をしてるのさ」
その植物に花がつき、しばらくするとそこに一人の男がやってくる。スーツ姿に金色に輝く装飾の数々、風貌はまるで絵に描いた成金。
('A`)「助けてくれマニー! やられちまった!」
縛られた男の出した植物はこの男、マニーを呼ぶ伝達手段であった。言わずもがな種は緊急用だが……今回さほど緊急でもないような気がする。
彼の言葉に、マニーはしばらく考えるそぶりをする。明らかに不自然、安易に杭を触ってよい物か、罠はないのか。ではどうしたらよいか。そういった思案を駆け巡らせた。縛られた男は、安堵の溜息を漏らす。これで助かる。
が、突然マニーは小型の通信機……服のボタンの一つに向かってこう呟いた。
¥・∀・¥「阿倍(あべの)ドクオの死亡を確認。引き続き藤原(ふじわらの)マニー、『月』の抹殺に向かう」
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