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しかし、それでも黄金の竹など見付かりはしなかった。山にどれだけ慣れ親しんでも、『黄金の竹』など初めからなかったのだ。そんな美味い話などない。先人が見付けたというのも、ありゃあ作り話に過ぎない。
だが生業としていると前述した通り、普通の竹を取って加工すれば暮らしていくだけの金を稼ぐことが出来たので、それでも僕は諦めずに山に入った。手先が器用だったのが幸いだったな。
歳を取りながらも、山へ潜り続ける。そしてこれは、そんなある日のことだった。
( ^ω^)「……誰だ?」
山の奥から、ぼんやりと灯が揺らめいたように見えた。時はすでに太陽も落ちかけている。誰かがいたならば、光の一つでも携える。
だが、そこには誰もいないのだ。返事がないから確かめに恐る恐る足を進めれば、ただ竹が茂り続けるだけで獣の気配さえも感じない。
しかし、僕の目には再び何かが輝いたように見えた。遠くで輝く、弱々しい光が見えた。再び、今度は少し警戒して歩く。間違いなく何かがある。僕は確信する。
だが結果、何も見つかることはなかった。見間違い。ただの期待感、心の底にある『黄金の竹』への執着、諦めきれなかった夢、全てがまやかしでも見せたのだろう。『そうあって欲しい』という思い込みに過ぎない。
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