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先程気絶させた男は縄で庭の木に縛り付け、それから僕は『月』と呼ばれていたらしき少女と山に入った。明かりがないと流石に暗い。
そもそもこんな真夜中に女が山に入ろうだなんて言い出すとは何かがおかしい。野犬だっているし、迷うかもしれない。
だが、彼女は迷いのない歩みをする。まるで、山道などを歩いているといった印象は受けない。
しばらくして、山に詳しいハズの僕が、先行する彼女の歩く道を見て首を傾げる。今まで風景を気にしていなかったが、見た事のない山道だ。
風が吹けば木の葉は舞うし、そりゃ全く同じ風景などはないだろう。だが、まるでそこは今まで来た事のない道だった。見た事もない実をつける木々があったり、見た事もない花が咲いていたり、夜中だと言うのにちっとも暗いという事はない。手元の明かりではそこまで大きな光は放たないというのに、次第に辺りは明るくなってゆくように思えた。
ξ゚⊿゚)ξ「不思議そうな顔してるわね」
この山の地理に絶対的な自信のあった僕としては微妙な気分だったのだろう。
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