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「竜二。今日彼女来るから。勝手に部屋入ってくんなよー。」
ノックも無しに部屋の扉をガチャリと開け、敦兄はその一言だけ残して、また扉を閉めた。
両親は共働きで家を空ける事も多い。
そんな時、決まって敦兄は彼女を家に招いた。
ムカつく程可愛い彼女。
高3になってすぐ敦兄はその彼女と付き合い始めた様で。
遊びに行く事は殆ど無い。
常に部屋で二人、何時間も出てこない。
部屋から聞こえてくるのは、いつもよりボリュームを上げた音楽と甘ったるい女の声。
思春期の男と女がする事なんて分かっている。
その度俺は可愛い敦兄の彼女を憎らしく思った。
歪んだ自分自身を恨んだ。
けれど敦兄を愛しく思う気持は増すばかり。
俺は愛憎の狭間で熱をおびる体を自身の手で慰めるしかなくて。
そんな俺を壊したのは敦兄だった?それとも俺自身だった?
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