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悲鳴が聞こえた。助けを呼ぶ声も聞こえた。
女性の声だった。金切り声だった。よほど恐ろしく、よほど驚いたのだろう。
声を聞いたとき何故か、理由なんて知らないし、分からないけれど、助けなければならないと思った。
だから佐々月は走った。
声の元へと走った。ひたすらに、息を切らすほど急いで。
自分に不思議な力があることは漠然とだが理解している。だから助けることが出来るかもしれない。
命に関わる問題かもしれないけれど、そんな自分の力ではどうすることもできない問題かもしれないけれど、そんなことはどうでもよかった。
偽善者だと自分でも思う。
思わず笑いそうになる。
アスファルトの地面を蹴る。右足、左足と力強く。
「ばっかじゃねーのかなあ、俺」
自嘲気味に呟く。喉の奥から押し出すように。
それから間もなく現場に辿り着いた。
佐々月は目の前に広がる非現実的な光景に驚いた。
声が出ない。息が詰まる。
目を見開く。口が開く。
--そこには化け物がいた。
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