【cherish our love 】

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綾の離任式の日。 体育館にはすでにほとんどの生徒が並んでいた。 私は自分のクラスの列に並ぶ。 回りの皆がちらちら私を見てたけど、私は真っ直ぐ壇上を見据えていた。 綾はまだ姿を見せない。 決戦の前に、私には一つやる事があった。 私の斜め前にいたさやかの肩をぽんと叩く。 振り向いたさやかは、私の顔を見て、きまずそうな表情を浮かべた。 「さやか。先生との事を黙っててごめんなさい」 私は深く頭を下げる。 さやかは黙ったままだ。 私は顔をあげると、小さな笑みをうかべる。 「もう、学校にはこれないだろうから。それだけは言っておきたかったの」 その言葉に、さやかが少し動揺した。 「千尋、それはどういう事?」 私に聞きかけるさやかの声を遮る様に、教頭先生が咳払いをし、マイクの前に立った。 生徒達は皆し…んと静まり返った。
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