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その時、体育館の空気が動いた。
たくさんの生徒達が、先生達を牽制しつつ道をつくる。
「みんな…」
皆は体育館の中央に一本の道を作り上げた。
道の先の壇上には、綾の姿。
「こらっ!お前らっ!やめなさい!」
教頭先生が囲まれた生徒の間で叫んだ。
私は皆が作った道を歩き出す。
最初はゆっくり。
段々足を早めて。
綾が急ぐように壇上から飛び降りた。
段々と綾の姿が近づく。
その顔に浮かぶのは、嬉しそうな笑顔。
お互いの手が伸び、指が触れあう。
綾は私の手を握りしめ、その胸にぐっと引き寄せた。
温かい懐かしい胸の鼓動に、私は腕を回しすがり付く。
「また、千尋を抱けた」
綾が喜びに満ちた声で私に囁いた。
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