滞納

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滞納

部屋のチャイムがヒツコク鳴る。 (安眠妨害なんですけど…。) 通信販売で何か買った覚えもない。 チャイムの次はノック攻撃。 (なんなの?!) 私は玄関のドアにチェーンをかけてから扉を開けた。 一人暮らしの女の常識です。 用心深く扉を開けたら、 エンジ色のベレー帽に、 濃いピンクの口紅をつけた女性がいた。 「市役所の者ですが。」 と、名乗った。 …居留守にするべきだった。 国民健康保険料も、国民年金も滞納しまくってた。 イエ、そんな暇がなかったんです。 もちろん財布に余裕もなかったんです。 これから長ぁぁぁぁぁぁぁい期間をかけて払いますから!! の言い訳は不要だった。 「河西サンのお隣に引っ越して来る方について、お話があって参りました。」 「はぁ…。」 私がここに住んで3ヵ月。 不在だったお隣さんに誰かが引っ越して来る模様。 詳しい話は出来ないけれど、生活保護の必要な方が越してくるらしい。 何かあった際の生活安全課までの連絡先を渡された。 そんなのが必要な人って何? 要件はそれだけ。 ヨカッタ。 税金滞納の取り立てじゃなかった。 「ご挨拶だけ宜しいかしら。」 と安全課の鈴木サンが言った。 私は一旦玄関の扉を閉めてチェーンを外してから、扉を大きく開いた。 隣人さんは男性だった。 挙動不審。 モジモジしてるから、こっちまで動揺する。 見合いじゃないんだから。 そんな二人を鈴木サンが慣れた様子で紹介した。 「佐久間蓮さん。」 と、ポケットに手を入れたままのサクマレンさんを前に押し出した。 私も鈴木サンの視線に促されて、 「河西蘭子です。」 と名乗った。 今後、会う事もナイと思うんだけど。 ‘地域密着!!ご近所サン同士に昔ながらの繋がりを’ 運動が盛んな地域に引っ越してきたから仕方ない。 安全な感じがして引っ越して来たけど、 やたらゴミ拾いだのカラオケ講習会だの興味を全・く、そそられないイベント(未満)が多い。 もちろん1回も参加した事がない。 回覧板は仕方なく回す…。ってか、玄関に立て掛けておく。 盗む人もいないでしょう。 私は夜の仕事だから、土日の午前中は爆睡してる。 だからお隣さんとも、きっと最初で最後の挨拶。 (下着、盗まないでよね。) 眉毛を描いてない、マロ蘭子の癖に厚かましく心配して た。
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