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夕方4時、
私は二度目の目覚めの時間を迎えた。
顔を洗ったら、メイクの開始。
マロ蘭子から、華麗な夜の蝶へ…。
と、言いたいけど、実際は深夜のコールセンター勤務。
時給1700円。
24時間受付の通信販売会社の夜間受注代行業務。
漢字で書いたら大層だけど、かかってきた電話を取って、注文を受けるのみ。
(マニュアル有。研修済。)
18時から翌朝1時までの7時間勤務。
夜中に注文なんて殺到しない。
実に、のんびりした仕事。
フリーダイヤルだから大半は夜に発情したオジサンのエロ・イタ電の対応。
(切るのみ。)
水商売は2ヵ月弱、体験してみたけど長く続けられる仕事ではないってのが感想。
自分には無理だと直ぐに退散した。
「もう昼の世界では生きない。」
って決めた時、手首に蝶のタトゥーを入れた。
もう普通の会社員には戻らないと。
覚悟を込めて、隠せない手首に入れた。
水商売を退散した後も、蝶のタトゥ-は勿論消せない。
だけどこれは自分の戒めと女としてのプライドが入れ混ざった大切な私の印。
スーパーのレジや、普通の会社ではもう働けない。
風紀規制の無い仕事に就いて生きていけばいい話。
そして、なるべく人と接触のない仕事が良い。
だからコールセンター。
社内の付き合いも面倒だから、夜間の登録制のバイト。
メイクを仕上げて、私服に着替えたら、歌劇団の人みたいな違和感。
ヘッドフォンを付けるから、頭は盛れない。
代わりに長い髪をしっかり巻いておく。
お客様とは顔を合わせないのに過剰にメイクしないと外に出られない。
元夫と偶然でも会わないために夜型の生活にしたのに、
万が一、出会った時にバッチリ決めた自分でいたいから。
夜なのにサングラス。
私は中身が多すぎるメイクポーチと、携帯電話2台と、
鏡を詰めた思い鞄を持って部屋を出た。
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