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「まって!行かないで!
お父さん、お母さん、僕を一人にしないで!」
…………夢か。
享年98歳。
かつて、魔法界を脅かした三人の魔法使いと対等に戦い、魔法界を救い、神とまで称えられ、死ぬまで一切衰えを感じさせなかったセクレト・リュビアラスク。
昨年この世を去ってからはや一年、思い出すかのように昔の夢を見るようになる。
アキ「…ふわぁ」
彼の名前は
「アキ・リュビアラスク」
その神の孫という事以外はいたって普通の魔法使いのつもりでいる。
こちらの表の世界、人間界で生活をして暮らしてきた。
親はおらず、セクレトと共に修行の日々を送っていた。
アキ「…そっか。
そういや、今日から学校か」
学校…。
それは、セクレトが死んでから1ヶ月ほどあとに襲撃を受けることによって見失いかけていた彼の新たな道標でもあった。
セクレトが死んだのを待ち構えていたかのように、何者かの襲撃により家屋は崩壊。
修行のおかげか、上手く身を隠し夜が明けるのを静かに待った。
彼の実力があれば撃退は出来たであろうが、それをしなかった。いや、そういう気分ではなかったのだ。
朝になりセクレトの知人だという男が訪ねてきた。
黒服ローブ姿に笑みを浮かべる口元。
怪しいと思ったが彼の話には興味が湧いた。
セクレトが死んだ今、
彼は12年という厳しい修行から解放されると共に昔から嫌と言うほど体に染み込んだ孤独との共存を、しなくてはならないという現実を与えられていたからだ。
その知人は学校への入学を誘った。
言葉では冷たくあしらうが、心の中では嬉しく思っていた。
住む場所がない彼にとっては学校の全寮制はこの上なく嬉しく感じ、ありがたく思った。
こんなうまい話はない。
そんな訳で彼は知人からの地図を受け取り、即決で入学を決断した。
そして、今日が入学式だ。
入学式なんだが…
アキ「…ここどこだ?」
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