花嫁修行

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「シンデレラ、ちょっとこれ洗っといて頂戴」 「シンデレラぁ、ご飯まだ?」 「はいはーい」  パパが死んで、半年。  あたしがいなきゃ何にもできないママやお姉ちゃんたちのおかげで、あたしは毎日忙しい。  パパのこと、ママのことを思い出してる暇なんかない。正直目が回るほど忙しい。  あたしは温かい特製カボチャスープを大きいお姉ちゃんに渡して、帰りに小さいお姉ちゃんから、靴下を受け取った。  ……くっさ……。  カボチャの良い匂いが、完全に負けてる。完敗。  指先でプラプラと靴下を揺らして、えいっと向こうに投げた。  あ……やっべ。  調度近くに置いてた洗濯物のバスケットには入らないで、作りたてのパンプキンスープにダイビング。  あたしは指先でそれを慎重に摘まんでこっそり取り出した。 「シンデレラ、スープ飲まないの?」 「う、うん……あたしあんまり、お腹空いてないから……」  テーブルにつき、皆先に食べ始める。  あたしはそれを、ひきつりそうな笑顔で見つめる。  ご、ごめんなさい。  けど捨てるのは勿体ないからね、最近家計が苦しいから。  良心の呵責に苛まれながら、あたしは固くなったパンをねずみのようにかじって食べた。  ……それにしても最近のママはどんどん化粧が濃くなっていくな。  ドレスもどんどん派手になるし。そういうお年頃なのかな? 「あっママ新しい指輪買ったの? わぁ、大きなトパーズ……」  あれ? 今、ママが恐い顔した。……いつもか。  元から似たような顔だから、突っ込んだら可哀想かもしれない。  そっとしておこう。 「シンデレラ、煙突の掃除ちゃんとしてるの? スープに、臭いが付いてるわよ」  あちゃぁ。 「してるわよ、ママ。だけどまた汚れてるかもしれないから、見て来るね!」  パンを急いで掻き込む。  目ん玉を剥いて胸をドンドンと叩きながら、あたしはディナーもそこそこに、逃げるように席を立った。
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