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煙突のカベをよじ登る。
え? トカゲみたい?
えへ。
毎日家事で鍛えてるから、これくらいの動きはお手のもの。ハシゴ付いてるしね。
一番上まで登って、そろそろと下を覗く。
もう帰ったみたいね。
二人の騎士が、綺麗な馬で広い庭の玄関辺りを駆けている。
高い薔薇の茂みに隠れて見えないわ。そろそろ剪定しないとね。
登ったついでに、街を見渡す。
白い壁に、赤い屋根。
それぞれの家を囲って飾るように、それぞれの庭があるの。
楓やナラの木が茂る庭、小さなブランコが揺れる庭。
白と黄色の花がちりばめられたあの芝は、カモミールかな。
ずっとそういうのが続いて行って、地平線に近付くほど小さくなっていくの。
そしてその中に、赤とオレンジと、茶色のレンガがいっぱいに敷き詰められた大きくて真っ直ぐな道が走る。
その向こうには――
お城。
あたしの肌のようにまっ白くて、つやつや。……まぁすすが付いてなければだけど。
高い高い、天まで届きそうなお城。
綺麗だな。
こんな眺め、お姉ちゃんたち知らないなんて可哀想。
一度誘ったけど断られたので、少しの間この景色を独り占めする。
――さぁ。戻ろう。
目の回るような忙しい日常へ。
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