暗転

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「ウソ……何で……?」  いよいよ舞踏会がある日の夕方。  テキパキといつも以上の手際よさで、早めに家事を終えたあたし。  逸る気持ちを押さえながら、ドレスの所に向かったの。 「……ママ――」  ママの形見のドレス――ススだらけの、びりびりになった布切れ――を掴み、さすがのあたしも戸惑いを隠せない。  パパが死んだ時以来だな。まぁパパに比べたら、ドレスの方が断然マシか。  ……比べるところじゃないけどさ。  うんでもまぁ何てことないな。うん。ドレスくらい。  なのにどうしてだろう。  涙が出るのは――
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