はじまりは雨

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「……ねぇパパ。あたし今の家族、好きよ。賑やかで、楽しくて」  庭の噴水で、久しぶりにパパとふたりきり。  今の暮らしはどう、トレメインはってパパが聞きにくそうにぽそっと聞くから……  あたしはパァッと笑顔で自信満々に、そう答えた。  良かったと笑ったパパの笑顔は、やっぱりとっても嬉しそう。  後ろの噴水が、キラキラの虹をパパの回りに作る。  透明で柔らかな、噴水の水と淡い虹がとっても似合う、パパの笑顔。  ――ママ。  ママはきっと、この笑顔に惚れたんだ。  新しいママもきっと―― 「――パパ…………?」  まぶしい笑顔を残したまま、パパは確かに顔を歪めた。  どこか痛いの? 大丈夫?  うずくまったパパに、慌てて駆け寄る。  ――すごい汗。何コレ。  もしかして……トイレ我慢してるとか? 「パパ。この際我慢は体に毒よ? あたしあっち行ってるから――」 「――シンデレラ」  汗ばんだ手が、あたしの華奢な上腕二頭筋を掴む。  ……もうちょっと鍛えとけば良かったかな。 「シンデレラ……」  なぁに。そんな痛そうな顔で。  パパは何度かあたしの名前をうわ言みたいに呟いて、それからあたしを抱きしめた。 「…………なぁに?」 「――新しいママと、お姉ちゃん達の言うことを、よく聞くんだよ。それから――……」 「…………パパ? パパ!」  どんどん重くなる、パパのからだ。 「……パパ! パパ!」
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