キライのち……

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「食べないんだ?」 「食べません」 「そっか」 高木くんはワンコが飼い主に怒られてシュンとしたような、悲しそうな表情で私をチラッと見た。 うぅ、そんな顔してもダメなんだから。 私は騙されないわよ? なんて強気な態度でいこうとした時だった。 ガタッと大きな音が聞こえ、振り替えると…… 高木くんの取り巻きの女の子達が私のことを般若のような顔をして見ていた。 「河合さん!」 ひぃーっ!!! 恐いよぉー。 でも無視する訳にもいかず恐る恐る 「何かな?」っと聞いてみた。 「お願いします!」 「へっ?」 てっきりなにか文句を言われるもんだと身構えていたので、気の抜けた声を出してしまった。 お願いされた? 「きっぺーくんと一緒にお昼食べてあげてください!」 「えっ?」 なっ、なんなんだこの状況? 「私達これ以上見てられません!!!」 「いつもカッコいいきっぺーくんのこんなシュンとした姿」 「私達はきっぺーくんのことが好きだけど、それよりもきっぺーくんの幸せを一番に望んでいるんです!!!」 「……」 圧巻。 この言葉が一番ぴったりだと思う。 だってみんな涙ぐみながらそんなことを言ってくるんだよ? 高木くん愛されてるね? そこまで想われてるなんてなんか尊敬しちゃうよ。 「みんなありがとう?僕嬉しいよ。でもね?これは僕と姫の問題だからこれ以上は大丈夫だよ?」 高木くんはそう言って取り巻きの人達のことをたしなめている。 みんな口々に「きっぺーきゅんやさしぃー」とか言ってまた涙ぐんでるし。 クラスの男子も「よっ!きっぺー男前」なんて囃し立てている。 うん。 なんなんだろこの感じ。 ここで私が断ったら、凄い最低な人間みたいじゃない。 これも高木くんの作戦の内なのかな? 参ったよ。 「高木くんお昼中庭で食べよっか?」 私が折れるしかないでしょ? 「いいのっ?姫!?」 高木くんが本当に嬉しそうな顔をしたので、なんだか私も嬉しくなったのは誰にも秘密。
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