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2年前―
私は一つの扉の前に立っていた。
取っ手も何も付いていないその無表情な扉には『特殊技術部』と書かれたプレートが付けられているだけだ。
狭霧
「……………」
じっと扉を見つめる。
いや……見てるのはその奥にある物だろう。
私を待っている彼女を。
体に小さな震えが走る。
狭霧
「……何迷ってるのよ」
いい加減覚悟を決めなければならない。
それが正しいかどうかは最早問題では無い。
彼女を造りだしたのは他ならぬ私なのだ。
途中でケツ捲るのは彼女の命を弄んだのとなんら変わりは無い。
その事を胸に無理矢理刻みつけ、胸ポケットからカードキーを取り出しリーダーに差し込む。
『ID00043。門脇 狭霧様。確認しました。ロックを解除します』
合成音が言葉を紡ぎ、目の前の扉がゆっくりと開いた。
金属同士の擦れる音が響き、その先にあるのは薄暗がりの空間を開放した。
その中に足を踏み入れる。
中では様々な機器が音をたて稼働し、モニターが常に変動するデータを表示していた。
狭霧
「……電気付けて」
『了解しました』
壁から返ってきた返事と同時、暗かった室内に光が満ちた。
その突然の眩しさに少しだけ頭がクラクラする。
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