失ったもの、手に入れたもの

3/4
前へ
/253ページ
次へ
狭霧 「さて……と」 部屋の中央に向かい歩きだす。 その先にあるのは腹程度の高さを持った円筒形のコンソールだ。 数歩進んだだけで辿り着き、パネルを指先で弾きだす。 数秒の沈黙の後目の前の床が上に浮き上がり左右に割れた。 出来上がるのは縦横1m四方の正方形の穴。 『シリンダーのロック解除』 狭霧 「……お願い」 『了解しました』 エアロックが外れる音が響き、割れた地面から銀色をした円柱が現れた。 狭霧 「…………」 コンソールを更に叩き『言葉』を入力していく。 目の前のモニターに『LOADING』の文字が表示。 そして銀筒の前面が音をたてて開放された。 狭霧 「まだ起きはしない……か」 前を見つめ呟く。 薄紅の液体が満たされたシリンダーの中。 そこに裸体の少女がいた。 しかしそれは本当の生まれたままの姿ではない。 顔には包帯が左目を覆うように巻かれ、手首、足首、脇、首など全身の至る所に灰色の管が刺さるように繋がれていた。 その痛々しい姿に自己嫌悪の感情が溢れ出す。 狭霧 「しっかりしろ私……」 今するべきは自傷じゃない。 彼女を救い……新たに肉体を造りだす事だ。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加