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狭霧
「ん……」
己に克を入れた時、ふと隣にあった紙の束に目が止まった。
紙にはコンピューターでタイプされた文字が羅列されていた。
その表紙に一際大きく書いてある言葉は――
狭霧
「対怪異専用機人製造計画書『BULLET』……か……」
読み上げ、ただ無感動に長ったらしい名前だと感じる。
大きくタイプされたその下には、責任者として私の父の親友の永倉 栄治の名前が。
そして開発主任には私の名前が濃淡無く刻まれていた。
……もう自分に後戻り出来る道など残されていない。
狭霧
「だったら……」
だったらこの役割を十二分にまっとうしよう――。
この子が目を覚ました時に世界を受け入れられるように―。
強く―
優しく―
造ってあげよう。
それが自分が担った役割なのだから。
そして私は彼女と真っ直ぐに向き合った。
それから二年。
完成した彼女が目を覚ました。
何も知らない……全てを忘れた純粋無垢な少女が――
序章終
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