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延々と続く白い廊下。
いつも歩いている廊下なのに今日は妙に長く感じられる。
それは恐らく今の俺の精神状況が大きく関係してるんだろう。
……何せ今向かっている先は―
恭也
「署長室……か……」
前方に目を向けると少し先に偉そうなただずまいをした扉が悠然と立ち塞がっている。
普段なら年に一、二回位しか用事の無い部屋。
呼ばれるなんて事も普段は無い。
恭也
「俺なんかしたっけか……」
首を捻る。
しかし全く心当たりが無い訳じゃなかった。
恭也
「この前ひったくりを後ろからバイクで轢いた事か……?」
…あれはしかた無かったよな。
心の中でそう呟き、その時の状況を思い返してみる。
…非番の日に街を歩いていると後ろから婆さんの叫びが聞こえた。
振り向くとフルフェイスヘルメットの男が鞄のような物を持って走り去っていく様が見えた。
ひったくりの現行犯。
警官としてこれを見過ごす訳には行かない。
即座に近くでバイクを止めようとしていた奴を脅してバイクを借り、追跡を開始。
だが、地元民なのか地形を生かして逃げるのでなかなか捕まえる事が出来無い。
最終的にまどろっこしくなって先回りしてバイクの前輪でそいつを轢き倒したのだが……
恭也
「やっぱり骨折っちまったのはヤバかったか……」
因みにその男は今警察病院で療養中である。
そんな事を考えながら歩いているといつの間にかが扉が目の前に鎮座していた。
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