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俺は窓の外から中の景色を見ていた。
誰も俺に気付いてなどいない。誰も見えていないのだ。
獲物が通りかかった。さて、どうしてやろうか。
「お嬢さん」
そう呼ばれた女性はハッと後ろを振り返り、背後から突然現れた男性を見た。
「貴方はいつからいましたの?」
驚く女性に男が軽く会釈をした。
「おっと失礼。すぐそこの曲がり角から出てきたのです。ところで――」
男は女性の全身を滑らせるように眺め、こう言った。
「こんな夜中にどうしたのです?もう月があんなに高く昇っていると言うのに」
「貴方には関係のない事ですわ」
ピシャリと女性が言った。だが男も食い下がる。
「こんな夜道は危険ですよ。丁度私も帰り道なのです。送って差し上げましょう」
「結構です!」
女性は走り出した。だが男は女性の腕を掴む。
「はなし――っ!」
抵抗しようとした女性が振り返った時、胸元に熱い痛みと鈍く光る輝きが見えた。
「ほら、危ないでしょう?夜道は気をつけないと―――」
鈍い光を放つ物体が引き抜かれた。鮮血と共に女性の体が崩れ落ちる。
「こうやって死んでしまいますから」
そして夜は更けていく。
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