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「マスター・・・オハヨウゴザイマス」
「おう、アルスか。今日も絶好調に寝惚けてるな!すぐ顔洗って頭スッキリさせてこい!あとその独創的な寝癖もな」
「はーい・・・・・・」
アルスと呼ばれた人物はマスターと呼んでいる人物の後ろをおぼつかない足取りでヘロヘロと通り、洗面台へと向かっていった。
「今日もすごい寝癖だなぁ・・・・僕の頭」
鏡に向かいそんな事を呟きつつ顔を洗う。ついでにその水飛沫で髪のてっぺんもちょいちょいといなす。
これが彼の寝癖直しスタイルである。
「寝癖直しましたぁー」
まだ寝惚けた感じに頭をこすりながら店の奥から顔を出す。
彼はここで下宿として住み込みで働いている。火事で家と彼の家族全てが燃えてしまって以来、この店の店主の下で働いているのだ。
「おう、アルス、今日の仕込みの材料足りなくなっちまったからちょっくら買出しに行ってくれないか?まだ朝市がやってるはずだ。釣りはバイト代にしていいぜ」
マスターと呼ばれた店主がアルスにメモと紙幣を渡した。店主も人がよく、当時は赤の他人だったアルスを引き取り息子半分弟子半分として可愛がっている。
「さっすがマスター!行ってきまーす」
駆け出していく彼の後姿を見て店主がポツリと言った。
「後ろ髪の寝癖直ってねーな」
そういう彼の後ろ髪にもちょこんと飛び跳ねた毛髪があった。案外似た者同士なのかも知れない。
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