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「あー・・・・・・ひでえなこりゃ」 男の目の前に広がるのは地面とレンガの壁に広がる、どす黒い飛沫だった。 「んで?このガイシャの死亡推定時刻は?」 「はっ、身元は―――」 「身元はどーでもいーんだ。この国のヤツなんだって事ぐらいわかりゃどーでもいい」 少し無精髭と薄汚れたマントを揺すって彼は言った。 「はっ・・・死亡推定時刻は今日の午前1:00から2:00辺り――と。死因は心臓をナイフのような刃物で刺した事による失血死だそうです」 保安官らしき格好をした男が少々戸惑い気味に答えた。 「・・・・・・なるほどね。即死させてからメッタ刺しか。・・・・・・ども、ありがとよ。あとはあんたに任せる」 「はっ、ですが・・・・・・その、この事件の犯人は一体何がしたいんでしょう」 保安官が死体に目を向ける。衣服の至るところに穴が開き、そこから大量に赤い染みが溢れだし、身体全体が紅く染まっていた。 「知らねーよ。本人に聞いてみろ」 「無茶言わないで下さい。まだ捕まってないんですから」 「だったらそんな無茶を最初から俺に言うな」 実はこの事件は1度だけの話では無い。この1週間に決まって人が死んでいく。犯人は未だに不明。ただわかっている事は犯行時間はいつも深夜。 死亡者は至って怨恨などを買う動機も無く、仲間や友達との帰り道に被害に遭う。目撃者は今のところ0。保安官たちも警備を強化しているが、全く効果は見えないという。 「そもそも誰も悲鳴を聞かないって事がおかしいですよね。まるで透明人間を探してる気分ですよこっちは」 「ま、時効モンにならない事を願うばかりだな。んじゃ、俺は帰るぞ」 マントを翻して男は歩き出す。背後から「お疲れ様です」と聞こえたと同時にボソっと 「そろそろかな」――と呟いた。
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