第一章

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「女の子は浮気を見破るのが得意だよね? なぜかわかる?」 質問されるとは思っていなかったが、訓太は解り易く説明しようとしているのだから、きっとこの質問にも、意図があるのだろう。 少し考えて、やっぱり解らないのでこう答えた。 「女の直感ってやつか? さて、何でだろな?」 髪をかき上げながら、訓太は答えた。 いちいちかき上げなきゃいけないなら、髪を切れば良いのに…… 「猿から人になりたての頃、力の強い男は狩りに出かけるから、子育てと家事は女性の仕事だったらしい。 だから、子供の少しの変化も見逃さないように、些細な反応を感じ取れるように、色覚識別細胞が男性より多く発達したんだそうだよ。」 なるほど…… 「じゃあ、些細な変化を感じて浮気を悟る?」 僕が答えると訓太は笑いながら、茶化した。 「どうもそうらしいね。でも、放課後の教室でする話題じゃないかもね。 これ女子に聞かれたら、浮気を計画してるみたいだ。 誰かに聞かれたらますますモテないようになるよ、良太郎」 「モテないのは手遅れだから、諦めるとして」 僕が認めると、訓太は追い討ちをかけた。 「まあ、モテない以上は浮気のしようがないね」 笑いながらひどい事を言う友人に、苦笑いで答えた。 「失恋したばかりなんだぞ、僕は」 身も蓋もない会話だ。まあ、否定できないので反論をしないでおいた。
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