第一章

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女の子の笑いをかみ殺したような声が頭の中でした気がした。 あたりには誰もいないので、気のせいだと言う事にして、訓太の話に耳の意識を戻した。 ここで友人は中断して、脱線した説明を唐突に始めた。 「だから、霊能力者や、巫女さん、イタコさんは、女性が多いんじゃないかな?」 でも僕は男だ。 「さあ良太郎、君は女の直感をタダのあてずっぽだと言いきれるだろうか?」 ……違うのだろう。ただ、まだまだ説明は不充分のように思う。 訓太の説明は続く。 「夢は現実ではないけど、リアルだろ?夢だと思わない事の方が多い」 それはそうだろう。すごく解り易い。子供の頃の夢を思い出す。 家の近所で地元の友人と遊んでる時、山から山姥が降りて来て、足の遅い僕は捕まってしまい、足の速い友人は、そそくさと逃げて行った。 夢全体が漫画チックで、僕も友人もかろうじて識別出来るくらいの稚拙な映像の夢だが、怖くて本気で逃げたし、捕まった時は、本気で暴れたのを覚えている。 掴まれた感触もあった。目が覚めると汗だくで、おまけに、汗とは明らかに違う、涙の痕跡が顔と枕を濡らしていた。
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