第一章

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「なるほど。それで?」 僕の相槌に満足しながら、訓太が頷いた。 訓太の言葉は、まだまだ休みは必要ないようだ。 訓太はまた喋りだした。 「良太郎の脳味噌は、現実に見たり聞いたりしているのに、意識してない事を、具現化する能力に長けてるんだよ、たぶん。 視覚周辺視野や、会話してる時、後ろの方で聞こえる、声や、音、BGMなんかを形にしてるのではないかと、仮定してみてほしい。それを脳内ホムンクルスと呼ぶんだ」 訓太は人差し指を天井に向けて、まるで授業をする教師のようにのような仕草で僕に説明をした。 「それは無意識にって事か?」 僕も思わず、授業のように解らない事を質問した。 「多分そうだろね。バイクや自転車を運転する時、良太郎のバイクの後ろに誰かが飛び乗ったりするよね?」 解らない人には決して解らないだろうが、するのだ。あれは怖いし、何より危ない。 「それは多分、道にある交通事故現場って書いた看板や、事故で亡くなった人に手向けられた花束、お供え物なんかを、無意識のうちに目で捕らえてるからじゃないかな? それを花束や、タバコの銘柄、お菓子やなんかで性別や、趣味、大体の年齢を判断してる可能性があると。 それに、死亡事故や自殺はテレビや新聞に乗るだろ?良太郎が思い出せないだけで、実は良太郎の脳味噌には記憶されてるんだ。」
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