第一章

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「だって僕にはそんな記憶にはないよ…… それに脳味噌の中にしか居ない幽霊に、バイクに飛び乗られたって、どうして、転びそうになる? どうして、掴まれた感触を感じる?まして、手形がつくのはどう説明するのさ」 僕は自分の中に溢れてくる疑問をもう止める事は出来なかった。 僕以上に訓太は僕の事を解っているなんて、認めたくなかったのかもしれない。 「一つ一つ説明していこう。 焦らずにね」 訓太は冷静に僕の疑問に答えていった。 「感触については思い込みによる暗示で、大体説明出来るよ。 ある実験でね、真っ赤に焼けた鉄の棒を被験者に見せる。 でその時点で被験者は目隠しされる」 「怖い実験だな…… それで?」 僕は思わずゴクリと大袈裟な音を立てて、唾を飲んでいた。 訓太は僕の反応の楽しんでいるかのように、説明を続けた。 「その被験者の腕に別の加熱してない、冷たい鉄の棒を当てる。 すると被験者はどうなると思う?」 想像するのも恐ろしい…… 何も言えないでいると、訓太は答えた。 「熱いと感じるんだ。ヒドい人は水膨れが出来たりする。熱いと感じるのは脳味噌で、ほんとは熱くない。でもリアルに熱いんだ」
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