第一章

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「そんな事ない。 勉強はあんまり出来ないけど、一年の時クラスの川上が、僕の財布を盗んだ。犯人が、川上である事と、隠し場所をピタリと当てたじゃないか。 僕が必死で推理しても解らなかったのにさ」 訓太が昔の話を始めた。 そういえば、僕が転校してまだ間もない頃たから、片桐家に引き取られた後に通い始めた中学で、そんな事件があった。 体育の授業をさぼった何人かの生徒の中から、川上が訓太の財布を制服から盗み、貴重品保管用の鍵付きロッカーに隠すヴィジョンが見えた。 ロッカーの番号まで当ててしまった。川上は諦めて白状した。 以来二人は親友だ。それから二人で推理小説を読んだり、探偵物のドラマの当てっこをして、遊んだ。 言われてみれば確かに僕は、理詰めで推理する訓太に対して、直感や閃きによる推理が得意だ。 訓太が見落としていた、小さな事柄が妙に気になり、訓太の推理とは異なる方法で犯人に辿り着いたりした。
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