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「‥‥‥起きて」
「‥起きて頂戴、サラ」
ゆっくり目を開けると苦笑いを浮かべたビクトリアがいた。
「よっぽど疲れてたのね~。でも、そろそろ夕飯だから起きてて頂戴ね」
「あっあのスミマセン私‥‥本気で寝入ってしまって‥‥」
「いいのよ。しっかり目が覚めたみたいね。じゃ、旦那様と奥様のところへいきましょうか?」
「‥‥はい」
すぐに身支度を整え、長い廊下を歩き出した。
緊張のためか、下を向いたままのサラを気遣いビクトリアは話しかけた。
「サラ、緊張してるの?大丈夫よ。旦那様も奥様もとても穏やかな人だから」
「‥‥はい」
「笑顔よ笑顔。サラは笑顔のほうがいいわ」
「はい!」
「あっいけない忘れてたわ。旦那様のお名前はハワード様。奥様はナタリー様よ」
「素敵なお名前ですね」
「名前に負けないくらい素晴らしい方なのよ」
こうして他愛のない会話で緊張も徐々ににほぐれ、スミス家主の部屋に着いた。
部屋の扉は権力を示すかのように重厚な造りだった。
「旦那様、サラをお連れしました」
ビクトリアの声にも一瞬、緊張感を感じた。
「お入り」
決して大きな声ではない。それでも耳にはスゥっと入る抑圧の効いた声だった。スミス家当主としての重圧がそうさせているようだった。
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