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震える肩を静め、スミス夫人は顔をあげた。
「私を心配してくれるの?優しい子ね‥‥‥」
そう言うと夫人はまた泣き出した。
「妻がすまないね。サラ、君は私たちの娘のセシルに本当にそっくりなんだよ。噂であの子のことは知っていると思うが‥‥‥」
辛そうに話すスミスさんに何も言えず、ただ頷くしかなかった。
「さあ旦那様も奥様もお話はお食事の時にでも。サラも困ってますよ」
しんみりした雰囲気を壊すかのようにビクトリアの声が響いた。
「それもそうね。ビクトリアの言う通りだわ。ごめんなさいねサラ。取り乱したりして」
そう言って笑顔を見せるスミス夫人はとても綺麗だった。
年は60歳前後くらいだろうか‥‥少し髪に白髪があるが、若い頃はさぞかし美しかったであろうと思われる容貌だった。
当主であるスミスさんも若い頃はハンサムであったと思われる。夫人より少し年上のようだが、夫人やビクトリア、サラを見つめる瞳は優しいものだった。
「では、今夜は皆で食事をてることにしよう。ビクトリア、頼んだよ」
「はい!かしこまりました」
長年勤めているだけあって、あっという間に当主の部屋に食事の準備が整った。
楽しいはずの食事が始まるはずだったのに‥‥‥
晩餐会には招かねざる客もきてしまった‥‥‥
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