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「旦那様、奥様、準備が整いました」
ダイニングにはきらびやかなシャンデリアが輝き、食べきれないほどのご馳走が並んでいた。
「さぁ、サラ。私たちと食事にしましょう」
初めは緊張していたサラも次第にスミス夫人やビクトリアの気遣いと、上品で博識な会話に引き込まれていった。
「あっ、そうだわ。サラ、あなたの家に連絡しておいたわ。大層心配なさってて一度一緒に行きましょう」
スミス夫人がニコッと微笑みながらも瞳は心底心配しているように見えた。
「あ、ありがとうございます。こんなにしていただいて‥‥‥」
夫人の優しさに泣きそうになったのを堪えながら応えた。
「サラ、私たちには息子と娘がいたが二人ともいなくなってしまった。君さえ良ければずっとこの屋敷に‥‥‥」
――――トンッ―トンッ――――
遠くのほうで玄関の扉を叩く音がした。
「旦那様、見て参りましょうか?」
「いや、構わん。今頃、ビクターが応対しているだろう」
「あの‥‥‥ビクターさんて?」
「恥ずかしながら私の夫なんですよ」
顔をほんのり赤らめながらビクトリアが答えた。
「ダメじゃない、ビクトリア。『最愛の』をつけないと」
「まあ、奥様ったら!」
仲良く話す二人に嬉しくなった。
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