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セシルとよく似た面立ちのウィリアムの顔は苦悶に歪み、サラに触れた手は赤くやけただれていた。
『おのれぇ‥‥‥よくも』
先ほどとはうってかわり、底から響くような嗄れた声がウィリアムから漏れている。
「一体‥‥‥なん‥なの‥?」
唖然とする雰囲気を壊すかのようにスミス夫人が口を開いた。
「あなたは誰?私の可愛いウィリアムじゃないわ」
目に涙を浮かべながらも、強い光を曇らせることはない。
「やだなぁ、お母さん、僕はウィリアムですよ。この姿なのはビクトリアのせいですがね」
「どう‥‥いうこと‥‥なの?」
「さあ、ビクトリアにでも訊いてください。僕はもう行かねば」
そう言うと黒い砂が巻き上がり、あっという間にウィリアムの姿が消えていた。
辺りは静まりかえり、いい知れぬ恐怖が支配していた。
「ビクトリア、知っていることを話してくれるか?」
沈黙を保っていたスミス氏が重い口を開いた。
その瞳には疲れた様子が伺えるが、何かを悟ったような悲しい色を帯びていた。
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