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『ブライアン・バートリー』
この辺り一帯に眼を光らせているバンパイアでした。
お嬢様は何も気づいていないようで、ただ幸せそうなお顔をなさっていました。
私は恐ろしくて恐ろしくて、その時は黙って屋敷に戻りました。
ただ立ち去る前に聞こえたのです。男の声で『愛してる』と………
「ビクトリア、私よ、開けて」
「まぁ、お嬢様ったら木を登ってきて……はしたないですよ」
「ごめんなさい。抜け出す時に使った窓を閉められてたから」
「……ねぇ、お嬢様。コソコソなさらずに旦那様に紹介なさったらどうですか?」
「……」
――この時の寂しそうなお嬢様のお顔は忘れられません――
「……それは出来ないわ、ビクトリア」
「何故ですか?立派な方なら旦那様だって反対なさいませんよ」
――私はお嬢様に意地悪なことを申しました――
「あの方はとても立派な方よ。でも反対される……」
「……お嬢様、一度だけでも………」
「出来ないわ。でなければあの方が殺されてしまう!!」
「お嬢様、もしかして正体をお訊きになったのですか?」
「……やっぱりビクトリア、見てたのね。そうよ、ブライアンはバンパイア。でもね、私は愛してしまったの。どうしようもないくらい彼を………」
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